#019: 新井和宏さん: 非営利株式会社eumo CEO:「お金とは何か」という人生の問い、共感資本社会、使うほど幸せになれるお金を目指して




新井和宏
非営利株式会社eumo CEO  1968年生まれ。東京理科大学卒。 1992年住友信託銀行(現 三井住友信託銀行)入社、2000年バークレイズ グローバル インベスターズ(現 ブラックロック ジャパン)入社。公的年金などを中心に、多岐にわたる運用業務に従事。2007~2008年、大病とリーマンショックをきっかけに、それまで信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。2008年11月、鎌倉投信株式会社を元同僚と創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い2101」の運用責任者として活躍した。鎌倉投信退職後の2018年9月、株式会社eumo(ユーモ)を設立。現在、北海道ニセコ町在住。
イラスト: 島田あや


Key Words: 
バークレイズ グローバル インベスターズ, ブラックロック (BlackRock), リーマンショック (Bankruptcy of Lehman Brothers), 非営利株式会社eumo, 鎌倉投信株式会社, 結い2101, ニセコ, 「新しいお金の教科書」, 金本位制, 信託銀行, 山一証券, 拓殖銀行, 安田信託銀行, オフショアファンド (Offshore fund), プロフェッショナル仕事の流儀, 「日本で一番大切にしたい会社」, 伊那食品工業株式会社, 日本理科学工業, ap bank, ヤマト運輸, 「持続可能な資本主義」, マザーハウス, トビムシ, 「21世紀の資本」, トリクルダウン理論, 仮想通貨, IKEUCHI ORGANIC, 栗城史多, ウェルビーイング, ユーダイモニア (Eudaimonia), ヘドニア (hedonia), ё旅納税, ё旅納税 子どもたちのチャレンジレポート, ニセコアンヌプリ


エピソードを読む:
[江良]
はい、今日は、非営利株式会社eumo(ユーモ)、CEO、新井和宏さんにお時間いただきました。どうぞよろしくお願いいたします。

[新井]
はい、よろしくお願いします。

[江良]
では、まず簡単に僕の方から新井さんのプロフィールをご紹介させていただきます。出身、神奈川県。東京理科大卒。1992年、住友信託銀行、現三井住友信託銀行に入られて、2000年、バークレイズ グローバル インベスターズ、現ブラックロックジャパンに入社されます。公的年金などを中心に多岐にわたる運用業務にご従事されました。ただ2007年から8年、お病気になったということと、リーマンショックをきっかけに、それまで信奉されてこられた金融工学や数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持たれるということになって、2008年に鎌倉投資株式会社を元の同僚の方とご創業されまして、2010年3月より運用を開始した投資信託、結い2101の運用責任者として、ご活躍されました。ただ、2018年、鎌倉投信をご退職された後、今は株式会社、非営利株式会社eumoをご設立されて、あと今は現在北海道のニセコに在住されてらっしゃると。簡単ですけれども。

[新井]
ありがとうございます。

[江良]
もちろん、新井さんのお名前は何度も何度も、いろいろな形で伺っていて。

[新井]
ありがとうございます。

[江良]
僕たちは資本主義のね、行き過ぎた資本主義、みたいな言葉をよく使うんですけれども、やはりちょっとこのままだと、何か世の中が良くないんじゃないか。じゃあそれをどういう形で、社会とかライフスタイルをアップデートしていけるのかということで、いろんな方々のお話を伺っているんですけれども、まずちょっと新井さんの、金融の業界に入られてから、いわゆるね、住友信託銀行、いわゆる普通の信託銀行から、今また後で出てくるeumoという、共感資本社会というコンセプトにたどり着くまでの、このステップをですね、ちょっと振り返ってですね、いきたいと思うんですけども。まず今ですね、ここに新井さんの「新しいお金の教科書」という本があって、イラストで著者、新井さんの歩みをですね、すごいわかりやすく人生ゲームみたいな形で、ちょっとこれはwebの方で、これを転載させていただくので、ぜひ聞いていただく方はwebの方をですね、見ながらちょっと見ていただきたいんですけども、まず金融の方に行かれるっていうタイミングっていうのはどこら辺でだったんですか?

[新井]
私自身が小さい頃お金に苦労して、まあ実際その、生まれたのも身体障害者の母親から生まれて、でたまたま私が小学校5年の時に父親が交通事故にあって、でそれで実は、事故に遭うまでは中学受験する予定だったんですよね。でそれを全部諦めて、公立の中学行って、それからもう中学校から、もう非公式にアルバイトをして、なんとか生きていくっていうことを選択し、で本当にお金に苦労した学生時代だったんですよね。大学も夜学に行って、あの昼も働いて、でそういった中で自分の気持ちの中にお金さえあれば大学にも行けたし、お金さえあればもっといい大学にも行けたってそういうふうに思ってて、すごいお金っていうもの自体が、自分にとってものすごく大きな要素になっていて、で、お金といえば、短絡的ですよね、若い頃は銀行だったんで、それで自分の中であった銀行に入るということで、三井住友信託銀行、今の銀行の名前で言うとですね、そこに入ることになったっていうのが実はきっかけなんですよね。

[江良]
なるほど。でも、そういうある程度やはりあれなんですか、そのまあ貧しいということと、お金のなんて、その量というんですかね、ここの貧しいっていうレベルでは、やっぱりお金とその幸せのちょっと相関関係が、やっぱりあるような気はしますよね。

[新井]
そうですね。あの僕お金をずっと、こうたまたま向き合うことになって、実は僕がこんなにお金について考えるようになったのは、夜学に通ってた時に昼間会計士の先生がいらっしゃる監査法人で働かせていただいてたんですよね。ご縁あって。でその時の代表が本当に哲学者みたいな方で、いつも僕に問いかけてくれるんですよね。でその時に監査法人に入らずに銀行に入りますっていうことをお伝えした時に、分かったって言ってくれて。その代わりに宿題をやるって言われたんですよ。その宿題が実は、僕の人生の問いになっていて、それがね、お金とは何か、なんですよ。

[江良]
それはでも、僕もぜひ今日本当にお伺いしたいテーマですね。つまりお金ってどのぐらい昔からあるの?まあでも本当にだいぶ昔からありますよね。

[新井]
そうです。お金自身は本当に皆さんね多分いろんなところで習われたことあると思うんですけど、貝殻がお金だったとかね、習われたことあるんですけど、今の紙幣、いわゆる皆さんが使われているようなものっていうのは、実は仕組みとしてはたかだか100年かそこらなんですよね。

[江良]
そうですか。

[新井]
そうなんです。ご存知の方がいらっしゃるかもしれませんが、昔は金と紐付いていて、

[江良]
金本位制ですね。

[新井]
そうです。何となく教わったなぁ、みたいな記憶がある方もいるかもしれませんが、今の制度になったのは、実はこの形になったのが、100年かそこらなんですよね。ただお金という概念そのものは、昔からあって、要は何かを交換する際に便利なもの、運びやすいものであったり、悪くならないもの、無くなってしまわないようなものがいいだろう。それでいて価値のあるものがいいだろう。そういうふうな形で、価値が高くて、小さくて持ち運びしやすいものっていうふうに考えた時に金って便利ですよね。

[江良]
そうですね。

[新井]
だからこそ金本位制がベースになっていたみたいなところもあるんですよね。それは時代ごとに希少性が高くて、持ち運びがしやすいものが、すごく意識されるようになったという背景があります。先ほど問いかけていただいたね、お金ってある程度こう、無いと困るよねみたいな話でいうと、確かにお金が全く無いと、現代社会の中では不幸、ニアリーイコール不幸になってしまう。これはもう、あの皆さん感じられてると思うし、あの僕もそう思います。ただ金融マンとしてね、経験してきて一番感じたのは逆なんですよ。反対側、お金があれば幸せになれるっていうのは別の話ですっていうことを僕はお伝えしたいんですよね。つまり全く無いは確かに不幸になる確率は圧倒的に高いです。逆にお金があるからといって幸せになる確率は高いかといったらそうではないことを僕は見てきた。でそれを伝えていくっていうことは自分の役割でもあるなというふうに思っているんですよね。

[江良]
じゃあ最初、三井信託に入られて。

[新井]
最初の頃はですね、ずーっと、あの劣等感ですよ。あのだって夜学で来てるの僕ぐらいしかいないし、まあまあね、ご存知の通り就職ランキングでその当時、バブルの最後の頃でしたから、上の方に銀行が並ぶ時代ですよ。ですから、そこには本当に、一流大学の人たちがもう名を連ねてるわけじゃないですか、同期が。だから必死になって勉強しまして、7年ぐらいで社内とか社外、信託銀行だと宅建とかね、そういうのも全部取らされるので、7年で取れって言われていた、社内外の資格を2年半で取っている。

[江良]
おおっ、必死に。

[新井]
必死になってましたね。そしたら、人事がね、お前何したいんだっていう話が来て、大学院行けなかったから勉強したいんですって言ったんですよ。で、大学院行かせてもらえるかなーって。ちょっと淡い期待を持ってたら。その当時バブルがね弾けている状態だったんで。

[江良]
なるほど。

[新井]
通常だったら大学院行ってから行く、調査部門に送られまして。

[江良]
ああなるほど、もう、いいよって、そこはスキップして。

[新井]
そうなんですよ。その年の前まではずっと大学院行かせた後に調査部に入ってたんですけど、私の代から、なんと直接営業店から調査部に送り込まれて。あの向こうも困惑してるし、僕らも困惑してるっていう、異動がありまして。で、信託銀行には調査部門が経済マクロの調査と、あのいわゆる年金の運用の調査っていう調査部門、2つに分かれていて。で、私は年金の運用の調査に送り込まれるっていうことになったんですね。それから運用の世界に入っていく、そういうきっかけになりました。

[江良]
なるほど。それはでも、でもそれをこう、やっていって、外資に転職されるということですね。

[新井]
そうなんですよね。もうその当時本当にバブル崩壊した後、いろんな銀行が、ご存知の方もいらっしゃるかもしれないんですけど、山一(山一証券)の件とか、そして拓銀(拓殖銀行)の話とか、で信託銀行でいうと、本当にいろんなところが合併合併、そしてあのもう株価とかが額面以下になるみたいなことが起こってたんですよね。具体的にいうと、安田信託っていうところがあって、50円の額面の株価が50円を切った、みたいな話があって、もう住友信託も終わるかもしれない、みたいな雰囲気になっていくわけじゃないですか。先輩がどんどん転職していくわけですよ。その中でたまたま僕のあの同じチームだった先輩が、来ないかって言われて、それで実は外資系に移ることになったんですね。で、当然ながら調査部門にいると、外資系の方がはるかに運用技術は進んでて、その当時ですね。であの、なおかつ年収も高いわけです。

[江良]
そうでしょうね。

[新井]
そもそもあの、お金に苦しんで お金さえあれば幸せになれると思っていた私がですね、年収が増えるわけじゃないですか。しかも理念が素晴らしいと。哲学がちゃんとしっかりした運用会社だっていうことが調査部門にいたからよくわかるわけですね。これはいかないわけにはいかない、ということで、もう転職を決めて、成功するっていうことになったんですよね。

[江良]
でも転職して、そこからその、多分どこかでそのね、さっきあのおっしゃっていただいた、お金があることと、お金がまああることと、その幸せというのは必ずしもイーブンではない、相関関係がないというのをたくさん見てくるっていうのは、そこはこう、その過程の中でどういうこうね、自分の年収も増えられたりする中でどういう気づきでいらっしゃったんですか?

[新井]
はい、やっぱりあの、自分が行った外資は、そんなに割とそのすぐ首を切るみたいな会社じゃなかったんですけど、 やっぱりあの、これすごい、感じたことなんですけど、やっぱり株主からのプレッシャーを感じて、経営陣とかマネージャー陣がですね、あのこう、それを実現しようとすると、どうしても歪みが出てきて、それでいて当然ながら、企業というのは成長するタイミングがあれば、残念ながら成長できないタイミングもあるので、そういった中でリストラも起こるわけですよね。で、その時にこの外資系に勤めている人っておそらくね、日本の中でも年収で言ったら本当に上の方の人たちじゃないですか。戦々恐々としてるわけですよ。明日クビになるかもしれないっていう状態。で、そういった中で、おかしいな、お金がいっぱいになったら、幸せな人たちがたくさんいるんだろうって思ってたわけですよ。

[江良]
そうですよね。

[新井]
あれ、そういうわけじゃないのかな。当然ながら、なんかね、お金稼いで悪いことして、家庭が崩壊してる人とかもいるわけですよ。

[江良]
うんうんうん。

[新井]
あれお金って、あれば幸せっていうのは、幻想だったんじゃないかっていうことに気づくわけですね。だから僕が見てきたお金に対するこう、執着や憧れっていうものが、崩壊していったっていうのも、この外資の中での一つの大きな経験だったんじゃないかなっていうふうに思ってるんですよね。

[江良]
外資は何年ぐらいいらっしゃったんですか?

[新井]
外資自身はですね、えっと2000年から2008年までいましたんで約8年間、はい、勤めてましたね。その時はただ本当に、あのうちのチーム自身は、もう飛ぶ鳥を落とす勢いで成長していったんで、年収も信じられないぐらい上がりましたね。

[江良]
それは年金を運用される

[新井]
そうです。皆さんのね、将来の年金をお預かりして、株とか債券、様々な資産に投資をしていく。世界中のあらゆる投資機会に投資をしてたっていうようなチームで働いていたので、その当時流行ってたね、あの皆さん覚えてるかな?あのオフショアファンドってあってね。オフショアファンドの設立から、オフショアファンドのまあ、オフショアですから、非課税の場所まで行ってミーティングをするとか、そういったこともやってましたね。

[江良]
それはどのぐらいの規模のお金を運用されるんですか?そのチームで。

[新井]
そうですね、あのこれ、あの僕2015年にNHKのプロフェッショナルっていう番組に出たんですけど、その時にそのままテレビに数字が出てあれだったんですが、あの、チーム全体では約その当時で10兆円ぐらい、運用してまして。でももう今のブラックロックは世界最大の運用会社ですから、もう今は日本のGDPの約2倍ぐらい運用してますね。

[江良]
すごいですね。それはでも、金本位制のお話で、お金はね、昔からあるけれども、新井さんは金本位制から、そのあとは何制というんでしたっけ?

[新井]
いわゆるですね、何かの裏付けがあるという形ではなくなってしまったので、基本的には一番わかりやすい言葉で言うと、法定通貨と言われるような、法で決められた信用をもとに、やられている通貨が一般になったということですね。

[江良]
日本銀行が、日本という国の信用を通じて、どんどん紙幣を刷れるようになった。

[新井]
その通りです。ですので、逆にそれによって有限なものから無限なものに切り替わっていったということですよね。

[江良]
多分、金本位制とかだと、金が限界なんで、その10兆だとか20兆で、それを金融のオンラインでピコピコピコピコじゃないけど、数字が、

[新井]
増えていくみたいな、お金がお金を得る世界みたいな、

[江良]
それはもう紙幣すら存在してないわけですよね。

[新井]
もうデジタル上の数字でしかないっていうような、そんな時代になりましたよね。

[江良]
それはやっぱりその裏付け、何かリアルな金であれ、貝でもなんでもいいんですけれども、そこから、それだけのその、データ上のというか、何なんですかね、それはちょっとした幻想なんじゃないかくらい、僕とかが見ると思わなくもないような。

[新井]
おっしゃるとおりですね。

[江良]
数字の世界で、それで運用率が何%だ何%って増殖していかれるわけですよね。

[新井]
そうなんです。

[江良]
それっていうのは、どういう問題というか、何が働いていらっしゃって、そこら辺もたぶん新井さんが、限界というか、何か納得されないとこがあったと思うんですけど。教えていただけます?

[新井]
あのー、今おっしゃられた通りで、お金とは何かって言った時に、難しい言葉で言ったら共同幻想なんですよ。この共同幻想を分かりやすい言葉で言うと、みんながお金と思ったらお金って言っていい、にしかならないってことなんです。つまりみんながこれがお金である、つまり1万円だと思ってくれて、取引してくれているからお金として成立しているだけで、お金そのものに価値があるわけではないっていうこと。で、そうすると極端な話、いくらでも刷れるし、増やすことができる。それに対して、実体、つまり貝殻であったり、金であったり、実体のものと紐付いているということは、先ほどおっしゃっていただいた通りで、限界が必ず来ますよね。つまり経済の無限成長を求めるためには、実体から乖離せざるを得ないわけですよ。つまり、違う言葉で言ってしまえば、地球が2個3個4個あるっていう前提みたいな形で、増殖するっていうことをやっていけば、無限成長ができるようになっていく。これ矛盾してますよね。これが弾けて、実体経済まで落ち込んでいくっていうのが、バブル崩壊というものだったわけですよ。リーマンショックというものだったわけです。つまり膨らんでしまうんですよね。みんな知ってるんです。このバブルが膨れるっていうことは。でバブルって何かって言ったら、実体経済、要は実体の人の営みから遥かに超えた、金融的レバレッジって言うんですけど、倍数がかかってお金だけが膨らんで、そしておかしくない?って思った瞬間にみんなが手を引くと実体経済まで落ちるっていう、

[江良]
共同幻想が崩れちゃうわけですね。

[新井]
そう、崩れるわけです。嘘だろ、こんなのおかしいだろ、

[江良]
これはレバレッジで、本当はこれしかないじゃんってみんな思っちゃったわけですね。なんか、ハッと全世界的に。

[新井]
そう。よく出てくるんですけど、ババ抜きっぽいんですよ。

[江良]
おー、なるほど。

[新井]
ババを誰かが引いた瞬間に、はじけるみたいなところがあって。で、それがリーマンショックは、リーマンが名前の通り、ババを引いた、みたいな形になってるわけですよね。これババを引くとか、膨らみ続けるって分かってて、なぜ人はやり続けてしまうんだろうっていうことをつくづく思うんですよね。

[江良]
でもそれはさっきおっしゃったような、多分もう株価があって、会社は多分その株主がオーナーでらっしゃって、で多分、経営者はそこの委託とか、執行を委託されて、じゃあ、このね、じゃあ今日64ドル株価が、じゃあもうそこをキープするためにやんなきゃいけないとか、なんかさっき歪みとかひずみみたいな言葉でおっしゃっていただいたけど、それが全部こう、いろんな緊張とか競争とか不必要ななんかものがあって、それがまた幸せとかとこう、乖離、矛盾していくとか。それを本当にど真ん中で。

[新井]
そうなんです。やっぱりあの、私は投資という世界を通じて見てきたものは、株っていうものを通して資本主義って膨らんできたわけですよ。成長してきた部分もあるんです。でも、あの、それによってのひずみが、もう明らかに出るような時代になってきたわけですよね。無限成長はできないでしょう。どう考えても株に投資をするっていうことは、それが成長するからこそ、またその株価がまた上がって、そして売却して利益が上がるってそういう仕組みなんですよね。そうすると企業に対して成長しろという圧力がどんどんかかっていくわけですよ。で、それを経営者であり社員さんたちがプレッシャーに感じながら、まあひどい場合は病んでいくわけですよ。そもそも、無限に成長できないですよねって分かってるのに、みんな分かってるのにやめられないんですよ。これがさっき言ってたババ抜き。要は、みんなが今、成長していかなきゃいけないってずっと思ってるのに、自分たちがそのゲームを降りるんですか?って。それできませんよね?って言って、ずっとやり続けて、誰かが降りた瞬間に、俺もそう思ってたって降りるっていうことができるようになる。でもそれまでは誰も降りない。

[江良]
それなんでなんでしょうかね。

[新井]
それは結局、その先ほど言っていた共同幻想の根幹ですよ。要はそこに必ず、自分たちが成長できる余地があるとかいう幻想を見てしまってるんですよね。だから乗り遅れちゃいけない。自分たちだけが取り残されちゃいけないっていう、この横並びの意識が全部そうさせてしまうっていうのを、考えた時に、これ資本主義って、どう考えても矛盾を生んでいくよなっていうのは、もう外資で働いていた時に、様々なことを考えていて、すごいおかしいよなって思って、それが結果として私はストレス性の難病にかかって、外資を辞めることになってしまったっていうのがあるんですよね。

[江良]
もう頭では十分その矛盾が、ちょっとごめんなさい、僕が拝察できることなのかと思いますけども、頭ではその矛盾がわかってるんだけど、まあ当然責任というかね、で、10兆レベル運用されてるわけですからね、責任とかプレッシャーとか、それでもうやっぱり体と、

[新井]
心の間がもうずれが生じてしまって、体の免疫自体が逆に攻撃するようになってしまって、体を壊してしまうということが起こって、それで本当にこれは治らないと言われて、それで辞めることになりました。

[江良]
なるほど。その辞める、まあね、そのお体のことが理由だから、辞めた時ってなんかこう。でもね、今までこうね、その、今まで、小さい頃からのこう、キャリアというか、歩みをお伺いする中でいうと、もう、途端にこう、ポッとなんか何も、すっとゼロにこう戻るって。

[新井]
何もなくなるんですよ。そうなんです、そうなんです。

[江良]
それもすごいこう、お時間だったというか。

[新井]
いやあ、もう、ね、一生懸命登ってきて。行った先は崖でいきなり転落したみたいな。そんな感覚ですよね。地の底まで落ちたっていう感覚の中。本当に辞める時も、まあ崖がわかるわけですよね。自分で辞めるわけですから。辞めさせられたわけじゃないから。退職を決意するっていうのは飛び降りなきゃいけないので、崖を。それはプロとしての意識があって、やめなきゃこれはみんなに迷惑をかけるって思ってたし、でも、やめた先に何があるのかって何も決まってなかったわけですよね。

[江良]
しかもやっぱね、一つずつ積み重ねていろいろ来られたものを、まあもう自ら全部捨てる

[新井]
捨てることになるんですよね、僕は多分病気にならなかったら絶対捨てられなかったと思うんですよね。でも病気になったおかげで捨てることができたっていうのは、ある種捨てることが全てだとは思わないんですけども、すごい自分にとってはいい機会だったなっていうふうに思うんですよね。

[江良]
じゃあその、ゼロに、もう一回真っ白なゼロに戻られたその後、鎌倉投資をやられるってことになるんだと思うんですけども、またゼロからの一歩目の歩みというか、一歩目にといったらどういうことを考えてらっしゃったんですか?

[新井]
あの、一つはですね、もう運用は二度とやりませんと。あの、なぜそういうふうに思ったかっていうと、その当時のバークレーズグローバルインベスターズ、今のブラックロックは本当に素晴らしい運用会社で、これ以上の運用会社はないと思ったんですよ。確信してたんです。資本主義の仕組みはともかく、これ以上の運用はできないし、皆さんの年金をお預かりしているんでそれを増やしていくっていうのは、自分たちの大切な役割だと思っていたから、だから、それに関しては絶対的なものを持ってたから、あの、ここだけでもね話したいこと山ほどあるんですよ。もう哲学が素晴らしくてね。

[江良]
哲学というのは?

[新井]
あのね、バイブルがあるんですよ。運用会社にバイブルがあるんですよ。そんな会社なんかどこにもないから。

[江良]
それはもうカルチャーというか。

[新井]
カルチャーですよ。

[江良]
我々はどういう存在であるべきで。

[新井]
そうそうそう。これをもとに自分たちは考えていくんだっていうこと自体が、しっかり出来上がってる会社って、思うと見たことなかったんですよね。

[江良]
なるほど。

[新井]
でこれ以上の運用会社できないし、あんだけ優秀な人たちが集まってやっている中で、ベンチャーで金融なんてありえないって僕は思ってたから、最初鎌倉投信、最初今の社長の鎌田に声かけてもらった時に断りましたもん。できるわけがないし、そんなやったって意味がないし、僕はもう一つの理由として、このもう、運用というものを通じてストレスに感じてやめざるを得なくなったんだから、もう懲り懲りだと思ったんですよね。運用はもう性に合ってないと。だから僕はもうあの、違うことをやるんだっていうふうに思ってたんです。なので、最初誘われた時に、嫌ですって断ったんですよね。

[江良]
まあでもねほんとそれで、まあ真っ白になったあとですからね。

[新井]
そんなのね、また病気になるかもしれないと思うじゃないですか。

[江良]
そう思われるでしょうね。

[新井]
ほんとひどいやつですよね。笑。でも、そう彼は、あの僕が、彼と営業というかお客様のところに行くときに、そのタクシーの中で言ってた、僕は社会のためにやりたいんですって言った、僕の一言はずっと忘れられなくて、一緒にやらないかって声かけたらしいですよね。僕言ったの全然覚えてないですけど。そうなんです。で、そこでまぁ悩んでる時に出会った本が、「日本で一番大切にしたい会社」、っていう本が、もう退官されましたけど、法政大学にいらっしゃった坂本先生が書かれたベストセラーの本なんですが、その第1巻がちょうど私が病気療養中の2008年4月に出るんですよ。その本を(手に)取って、まあ本当に、カルチャーショックでしたよね。何がカルチャーショックだったかっていうと、あの2つの会社があったわけです。1つは日本で一番いい会社って言われるような、あの本当に尊敬される、長野県の伊那谷にある、伊那食品っていう会社さんがいて、そしてもう一社さんが日本理科学工業って言ってね、あの障害者の方々がチョークを作っている会社さんで、もう障害者50年以上雇ってるっていう、まあそういう会社さんだったんです。で何がショックだったかっていうと、あの、僕身体障害者の母親から生まれてるじゃないですか。この命を授かって、俺は何をやってたんだろうって。つまり、会社っていうのはそれまで儲けの対象でしかなかった、僕にとっては。売り買いして、いくら儲かるかそれだけを考えてきた。この本を読んだ瞬間に、会社っていうのは人の血が流れていて、愛すべき存在で、応援すべき存在である。そういう投資ができるんであれば、ある種こう、みんな喜んでくれるだろう。それは母も含めて。だから、180度価値が、考え方がひっくり返るわけですよ。今までは合理的に金融工学で機械で出てくる、数式上のトレード金額を取引する。で儲ける。で儲け続けてきたっていうところから、売り買いじゃなくて、応援し続ける。それでいてちゃんと皆さんの財産が、安定的に増えるような仕組みを作るっていうふうにやったら、それができるんだったら鎌倉投信でやろうって決めて、それで鎌倉投信を元同僚と一緒に立ち上げたっていう、そういう背景があるんですよね。

[江良]
それはその鎌田さんは、最初からそういうコンセプトを持ちだったんですか?

[新井]
あの、鎌田は基本的にまあ社会のために役に立つ金融というのを作っていかないきゃいけないというふうに思っていて、であの私が、運用のコンセプトは全部決めるってなっていたので、そういう意味で、まあある種そこが合致したっていうか、鎌田はそういう経営をして、そういう運用会社を作りたい、私自身はそういう、会社を投資対象にしていくような運用っていうのができないかっていうと考えるっていうふうになっていったっていう感じですかね。

[江良]
なるほど。これが何年なんでしたか?

[新井]
2008年なんですよね。15年ぐらい、そうですねもう15年になりますね。

[江良]
本当に金融のリーマンショックとか、そこである、いろんなモラルとか、いろんなこうお体も含めてね、そういったところから。でもそういうのって金融業界では鎌倉投信以外も、あと世界的にもそうなんですけども、なんか同じように、多分僕たち、僕とか例えばap bankとか、いろいろこう、音楽業界とかいろんな業界で、このままじゃまずいっていうのを、いろんな形で、みんな歪みみたいなものを感じて、みんな行動し始めるんですけど、金融もいわゆるESGみたいなこともそうだし、みんなここら辺のリーマンショックで大なり小なり同じように、限界というか矛盾というか、考え出して動き出したようなこともあるんですか。

[新井]
そうですね。鎌倉投信は割と早かったかなとは思うんですけど、やはりそれをきっかけに、いろんな金融の在り方って出てきたと思うんですよね。それは本当に今おっしゃられた通り、ESG投資もそうですし、このリーマンショックにおける気づきだけじゃなくて震災も含めてやっぱり、金融にとっては大きな気づきがあったと思うんですよね。ですから独立系で、いろんなちょうど金融機関が立ち上がるような、流れであったことも事実だと思うんですよね。

[江良]
なるほど。じゃあもうちょっと鎌倉投信をお伺いすると、ただ鎌倉投信ももちろんお預けになる、

[新井]
お金をお預かりしてそれを運用する。

[江良]
だから、ただその株価とか、そういったことのプレッシャーみたいなものはないかもしれないけれども、もちろん出していただくお金に対して、それを増やしていかなきゃいけないという、最低限の責任はお持ちだと思いますけども、お伺いしたいの、はまず応援したくなる会社っていうのは、どういう定義だったし、それはもう一つは、どういう会社と思われたかってことと、それをお金を出す側の方々と、どういうふうに共有をされてたか、ということについて伺ってもいいですか?

[新井]
ありがとうございます。その当時はですね、自分たち無名の、投資信託の会社を作るわけじゃないですか。で、その時に、いい会社に投資をするって言った時、いい会社とは誰が決めるんだろうか、いうことを設立当時から議論してました。で僕は、新井和宏という個人が決めるということはないだろう、っていうふうに思っていて、いい会社は社会が決めるんだと、いうふうに思っていて、社会が決めるような枠組みにしていきたい。ただ現行の法律上、ファンドマネージャーが投資先を決めるっていうプロセスは変えられないわけですよ。

[江良]
あ、法律で決まってらっしゃる。

[新井]
これどうしようか、どこまで言おうかな。笑。

[江良]
時間もあれですけど、いいんですか?

[新井]
時間気にしないでいいんだったら楽しい話しますよ。

[江良]
じゃあぜひお願いします。

[新井]
いいですか?

[江良]
よろしく、新井さんよろしくお願いします。

[新井]
最初ね、僕本当に多分、自分でも思うんですが、アイデアマンだと思うんですよ。アイデアが突拍子もないんだと思うんです。みんなで投票制にしようと言ったんです。

[江良]
ああ、なるほど。

[新井]
要は、みんなでいい会社を応援するから、いい会社と思うものをランキングにして、そこに投資ができるような状況を作っていこうというふうに思ったら

[江良]
みんなってのは、投資家さんですか?

[新井]
そうです。投資家とか関心を持ってくださってる方々に、やろうとしたんですよね。そういうのも相談したんです。当たり前ですよね、金融庁にね、怒られますよね。それはね。なんでかって言ったら、その人自己のための取引かもしれないから。

[江良]
そうか、なるほど。そういうこともあり得ますね、確かに。なるほど、なるほど。

[新井]
性悪説で考えている、その金融業界で、こういうことは全く成り立たないわけですよ。

[江良]
確かにそうですね。確かにそうですね。

[新井]
これをどうクリアするかっていうのが、ストーリーなわけですよ。どうクリアするかって言った時に、まず、僕が何でも決定できるっていうこと自体はすごく危険なので、僕はあくまでも提案権を持ちます。つまりこの会社はいい会社でしょっていうことで、今言ったプロセスを外ではできないから、社内でやることにしたんです。

[江良]
なるほど。

[新井]
社員全員が、社員、役員全員が、いいね。

[江良]
全員ですか?

[新井]
全員。全員がいいねって言った時だけ、銘柄が入れられるってしたんです。

[江良]
へぇ~

[新井]
一人でも反対したら、僕が事務所の隅っこで泣くっていうね。そういうようなプロセスに変えたんですよ。

[江良]
なるほど、なるほど。

[新井]
変えたというか作ったんですよ。で、その次に今度は外のお客様に対しては、投資をし始めたら、投資をするって決めた、いい会社であるっていう理由を、明言するっていうこと。で、当然ながら今度は外す時には、外す理由もちゃんと明言することで、それを説明責任としたんです。いい会社であることをお客様に定期的に報告することによって、お客様の表情へ、お客様の意見を聞いて本当にいい会社なのかどうかを議論する場を作ったんです。

[江良]
なるほど。

[新井]
大変ですよこのプロセス。うん、大変だった。あの、その当時ね、僕がやってた時、あの一番投資先で大きい会社さんがクロネコヤマトの宅急便の、ヤマトさんが投資先だったんですよ。ヤマトさん、すごい良いこともやるんですけれども、あの宅急便が大変な時期あったじゃないですか、なんか捨てたりするとか、あの事件が起こったりねしてたんで、その時に当然ながらその問題が生じて、で実際ね、その社員さんたちは大丈夫なのか、みたいな話が出てくるわけです。お客様と話していて。で、その時に、それが本当にいい会社なのか。で、本当に、働きがいがあってやりがいがあるのか。あんな宅急便が大変な状況を作り続けてていいのか、みたいな議論が、お客様との報告会でこう起こるんですよ。その時に僕が言った言葉は、みんなでチェックしましょうって。来た宅急便を届けに来た人に、処遇よくなりましたか?大丈夫ですか?改善されましたか?そういうふうに、聞いてみようって。もう、でそう聞いて集めたんですよ。フィードバックを。それが僕らの機能だと思っていて、もの言う株主なんですよ。もの言うのは、いい会社かどうかっていう観点でのみ、僕らは機能しようと思っていて、僕らはいい会社だって言ってる以上は社会的責任があるわけですよ。ですからそれに応え続けるっていうことが、役割としてあると思ってそういう仕組みを作ったんですよね。

[江良]
なるほどね。

[新井]
ちょっと異常ですよね。

[江良]
いやでも、もう最初のところから、一糸もぶれずに。でもそれは本当にそこまでちょっと、わからないですけど、ゼロまで戻って、本当にその180度、世界で一番大切にしたい会社での、この変更でもうドーンと新しい目標が、まぁ漠然かもしれないけど、それをちゃんと着実に形にされていったと、そういうことですね。

[新井]
良かったのは、いい会社とか知らないわけですよ。何でかって、僕金融工学だから会社訪問なんか一度もしたことないわけですよね。だから全くわからないド素人なわけで、いい会社とかいい経営者とか誰ですかみたいな、どんな会社ですかって分かんなかったから、坂本先生ところいって、3年半共同研究させていただいたんですよ。要は素人だったから良かったんですよ。

[江良]
なるほどね。じゃあそこで坂本先生と一緒に、いい会社、まあ多分ね、いい会社にも、「持続可能な資本主義」を拝読させていただいたから、いい会社もいろんな観点があって、そこら辺を整理して、多分ね、それを投資家さんと共有していくということは、そこをちゃんとこう見える化、というか、

[新井]
コミュニケーションをとって、

[江良]
コミュニケーションをとるための土壌作りから、参加する仕組みまで。でもまあ投票は法律でダメだから、ま、そういうね。

[新井]
僕が、情報収集をしていく。

[江良]
でも、まぁ結果的には投票ではないけれども、ちゃんともう言うというか、投資家さんがそこに関心を持って、ちゃんと参加できる。意見を

[新井]
意見を僕が代理のような形で代弁していく。届けていくっていう。それがある種運用会社としての責任じゃないかなということで活動をしてました。で、逆に金融工学的なものは、いい会社っていうのは、そういうふうな形で決まるであれば、もう固定化されてるわけじゃないですか。その中で反対側で、儲けなきゃいけないわけですよね。こっちはもう完全に金融工学的に、ロジカルにずっと持ったまま、儲ける仕組みっていうのを開発するっていう。

[江良]
なるほど。これはだからあれなんですか?会社を投資先として判断する時っていうのは、そのいい会社がどうかっていうその尺度があって、で多分こう持っている金融工学的に儲かるかどうかみたいな尺度があって

[新井]
いくらのプライスで買っていくのか、どのタイミングで調整をするのかとかっていうものを、ロジカルに、全部ロジックを作ったんですよね。こっちは得意だから。

[江良]
これはもう昔とった杵柄で。

[新井]
そんな通りです。

[江良]
これはあれなんですが?やっぱりこう、基本的には全く別の作業。

[新井]
全く別の作業ですね。要はプロとして報酬をいただいている以上、プロの技術は使うんだけれども、いい会社っていうのは、自分が決めるんじゃなくて、社会が決めるものである。その中でお客様が、心の満足と経済的な豊かさと、両方を手に入れる。幸せって物心両面だから、その両方を持ってお客様を幸せにしたいっていうのが、僕らの考え方だったんですよね。お金だけ儲ければいいっていうのは、外資で病気になった時に僕は終えたと思ったんですよね。

[江良]
じゃあどんなに、ある意味、お金が儲からない会社はいい会社じゃないというのはなかなか難しいと思いますけど、すごいいい会社なんだけども、やっぱりちょっとこう、投資対象としては金融工学的にはダメ。で、これはやっぱダメというか、投資対象からは外れる、もしくは入れないとか、そういうことも当然あり得るわけですね?

[新井]
いや、あの基本的には、いい会社っていうのは持続可能性がなきゃいけないから、続くっていうことに対しては、いわゆるサスティナビリティですね、ここに対しては重要視してました。だから続くっていう意味では、ずっと業績が赤字だったら続かないですよね。続かないっていうもの自体はこれはビジネスとして問題だから、それはできないよね、はあるんですけれども、赤字だから投資しないっていうことはなくて、実際鎌倉投信のファンドの中では、組み合わせでリターンを埋めればいいっていうふうに考えていたので、実は中には結構多くのソーシャルベンチャーにも投資をさせていただいていて、多分代表的なところで皆さんが知ってるとしたら、どうだろう、マザーハウスさんとか、そういうところにも投資をさせていただいてたし、あの林業なんとかしたいっていう、トビムシっていう会社にも投資をしていたっていうことがありました。だから全体でバランスが取れればいいっていう解釈の中で、その会社が投資家が応援したくなるような、いい会社かどうかっていうところが、やはり僕らにとってはポイントで、あとは組み合わせてウェイトで調整しながら全体のパフォーマンスが下がらないようにどうやるかっていうのが、腕の見せ所だったので。

[江良]
それは金融工学的プロとして。いやでも、それで、あのね、もう逆に、運用益が日本最高のファンドになったとか、本当にそんなことってあるんですかって思っちゃったんですけど。

[新井]
そうなんです。あの運用の世界で言うと、リスク1単位あたりのリターンが最大化されるっていうのが運用成績で日本一になるっていうことなんですけれども、リスクを最小化してリターンを上げるということに成功して、それで2013年に日本一になったんです。たまたまというか、これはお客様にもお伝えしたんです、当時。あんなの偶然でね。36ヶ月、3年のパフォーマンスで測るんです。これ1ヶ月前でも1ヶ月後でも1位じゃないです。

[江良]
そうなんですね。

[新井]
だから神のお遊びですよ。

[江良]
なるほど何かのタイミングで。

[新井]
そうだからたまたまなんですよ。でもたまたまだけど、1位に神様はしたかったんですよ。だからお客様にいいことやってるといいことありますよって。

[江良]
それも素晴らしいですね。

[新井]
私は本当にこれは運だと思ってるし、運を用いると書いて運用と書くので、私がこの運を用いて運用させていただいてます。っていうことを言ってましたね。

[江良]
なるほど。いやでもね、何か運をね引っ張ってくるというか、でもなんかそういうちょっと不思議なことって、多分なんか新井さんの周り、いろいろ起きてるような気が勝手にしてましたね。

[新井]
自分の力ではどうにもならないことなわけですよ、これって。変な話、相手がどうなるかっていうのも、自分たちではどうしようもないことだし、そのタイミングでそれが出るかどうかわからないし、それがたまたま3月だったから、年度末っていうことが切れて計算されているだけの話で、それが4月だったら違うわけであって、要は人知を超えた何かっていうものはやっぱり神様よく見てるんだと思っていて、自分では動かせないものを動かしてくれるっていうことは本当に思ったんです。でも、あのこれまた面白くて、2013年に日本一とって、私はその10年で鎌倉投信卒業して、次のeumoという会社を作るんですけど、ちゃんとあの、新井がいなくなっても2019年にもう一回日本一とっているので、そういう意味では新井がいなくても大丈夫ということを証明したんですけど、なんかちょっとジェラシーを感じたわけですよ。俺がいなくてもやっぱり、自分はちゃんとその金融工学的なやり方、仕組みを残してたんですよ。だから誰が来てもできるようにしたつもりなんですけど、なんか寂しいじゃないですか。人間ダメだなとか思って。あ、なんだ俺結構手離れ感いいな、俺、次の人にバトンタッチ上手くできたな、とか、こういうことを考えてたんですけど、ダメですよね。人間愚かですね。

[江良]
でもやっぱり神様がそれを新井さんにまた、教えてくれてるのかもしれないですね。

[新井]
それでも言い訳してるんですけどね。3年間のうち2年は俺がいたからだって。笑。ダメですね。

[江良]
負けず嫌いなところもね、おありですからね。

[新井]
そりゃね、ファンドやってるぐらいですか、そうですね。

[江良]
はい、じゃあ今ちょっと、eumoのお話が出てきたので、今日のメイントピック、時間も押しつつあれだったんで、でもそこちょっとたっぷりお話しさせていただきたいんですけど、eumoを立ち上げられるそのきっかけ。

[新井]
そうですね。あの一つは鎌倉投信っていうものが2013年に日本一とって、まあそれが社会性と経済性が両立するっていうことで、2015年にNHKのプロフェッショナルという番組に取り上げていただいて、で本当に、その後、黒字化して、事業としては純風満帆っていう形になっていくわけなんですけれども、でもその裏でですね、トマ・ピケティが「21世紀の資本」っていう、まあ日本でもベストセラーになってますけれども、要は、格差は縮まりませんよっていうことを証明したわけですよ。トリクルダウンは起きませんって。で、そんなことを金融マンとして、重々分かっていたつもりなんですけれども、なんか見て見ぬふりをしていたような感覚があったんです。で、運用って、お金を持ってる人のお金を増やせるんだけど、持ってない人のお金は増やせないわけですよ。

[江良]
そうですね。

[新井]
これってどんなに綺麗事を言ったって、格差助長するだけで俺人生終わっていいのかなと思って。鎌倉投信はもう一つの形としてできたし、仕組みを提供してるから僕じゃなくてももうできるんですよね。なんかそこで自分だけが、左うちわじゃないですけど、素晴らしいものを作ってその中で生きていくって、かっこ悪いなと思ったんですよね。

[江良]
なるほど。

[新井]
で、その当時から、鎌倉投信やってる当時から、いろんなソーシャルベンチャーとか、その海外で活躍してる人とか、若い人たちを見てきて、俺このままでいいのかなっていうふうに思って、で、すごい悩んだんですよ。じゃあ格差が生まれないお金の仕組みってなんだろうって。僕の人生の問いは、お金とは何かだから、そんなのデザインできるかなっていうふうに思った時に、あの、過去の先人たちは、腐るお金、っていうのをやっていると。確かにそうすると、どこかであった財産がなくなっていくので、格差って生まれないよなって。じゃあそれを、社会に実装していったらどんな社会ができるんだろうか。そもそも、人はお金のために生きるわけじゃなくて幸せになるために生きるんであって。なんで、お金が幸せにしてくれるって僕は思ってしまったんだろうって。それはやっぱり今の資本主義の仕組みがお金を集めていくゲームだから。お金を持っている、所有しているっていうことが資本主義において幸せになる前提だっていうふうに僕が勘違いした。じゃあそうじゃなくて、お金って、金融で僕は学んできたことは、特に鎌倉投信時代からいろんな会社に出会ってきて、いい会社の経営者たちがやってることは、いいお金の循環を作ることなんですよね。いい会社、これ面白いんですけど、いい会社の取引先は儲かるんですよ。それはそうですよね。悪い会社の取引先は儲からないんですよ。なんでかって言ったら搾取するからですよね。それをずっと見てきた時に、やっぱりお金っていうのは代わりにやってくれてありがとう、っていうものだと思っていて、それによってみんなが豊かになるということを作ろうとしているわけじゃないですか。あくまでもお金を集める行為をしてしまうと、自分だけ良ければいいっていうふうに思考がなっていく。で、これって、幸せに向くんじゃなくて、幸せじゃない方向に人は行動しちゃうよなって。だからこそ、資本主義の根幹であるお金っていうもの自体を変えたら、資本主義全体の経済も変わっていくんじゃないか。

[江良]
まあそうですね。もう本当の一番下のインフラですよね、お金ってのはね。

[新井]
でその当時、当然ながら仮想通貨っていうのが出てきたわけじゃないですか。仮想通貨は僕から見ると新しい既得権にしか見えないわけです。持ってる人が強い。じゃあその新しい既得権を作るんじゃなくて、もっと自然に近いもの。あの腐るお金っていうのは、自然に戻るっていうことだから、ある種、今までのお金っていうのは不自然な存在だったわけですよね。永遠の命がそこに存在するわけですよ。そうでないものを作っていくっていう風なことを悶々として考えてたわけです。で、こういうのって、タイミングが来るんですよね。どういう時に来たかっていうと鎌倉投信10年やってきて、10年間の振り返りをやったわけですよ。創業メンバーで。その時に、あのメンバーの多くは、できたことに対して評価してきたんですよね。僕はその反対側のできなかったことが、すごい気になってて、それを実現したいってやっぱり思っちゃったんですよね。つまりできなかったものっていうのはもっと、いろんな多くの会社さんを応援するような仕組みを作りたい、でも今の法律であり、今の仕組みでありっていうものでは、できないことがたくさんあった。それを育てていくっていうものに、他の役員はフォーカスし、僕はできなかった部分にフォーカスをし、同じ形でやっていけないだろうなこれじゃ、っていうふうに思った。まあそれが、2018年だったんですよね。2008年に創業したから、そこに追い討ちをかけるように2つの事象が起こるわけですよ、一つは何かっていうと、投資先の中に今治のタオル屋さんがあってIKEUCHI ORGANICっていう、タオル屋さんがあって、その会社はベンチャーキャピタルに出資をしてもらってて、で、えーっと、まあ僕は上場をする必要がないと思ってたから、上場をしないっていう方向性の中で、ベンチャーキャピタルが持っている株式を買い取ってほしい。で、鎌倉投信は実は仕組み上、株式は買い取れなかった。債権で投資をしてたので、で、それができないっていう中で、それを引き取る期限があった。

[江良]
なるほど。

[新井]
で、結構大口だったんですよ。株でいうとね上位第3位になるぐらい大株主の量だったんで。で、それを誰かに引き取ってもらおうっていう風に考えたんだけれども、あまりにも危ないので引き取り手が見つからなかった。で、引き取らなきゃ、でも、個人がファンドマネージャーだとして、買い取ってしまうと、利益相反とかがあるので、それはできないんですよね。だから、やめざるを得ないな。

[江良]
なるほど。それは、ごめんなさい、ちょっと2点目行く前に挟み込んで恐縮ですけど、なんていうの、それは新井さんがやらなきゃいけないと、辞めてまで、多分それ引き取られたってことなんだと思うんですけど、そこまであの、僕、池内さん存じ上げているんですけど、そこまで普通やるかっていうふうに、ちょっとあの、ねえ、まあ今まで大切な、いい会社と認定して、多分すごいあの信頼関係を築かれてきた会社を応援されたい、もっといろんな会社を応援したいお気持ちはあるとしても、それがでも何かやらなきゃってこう降りてきちゃったんですかね。

[新井]
つまりその僕は残したい、まあIKEUCHI ORGANICとしては一番厳しい時期だったんですよ。その時が。2018年当時。会社が続くかどうかっていう風なぐらいの状況の中で、引き取り手が見つからない。これは何としても何とかしなきゃいけない。じゃあ、代打、俺?みたいな。たまたま自分が10年経って、手放すことができる。で、若い人たちが育っている。仕組みもある。反対側の残り50%できなかったことを実現しないといけない。ピケティが書いていた、この格差を生むような仕事で俺は終わっていいんだろうかと思っている自分がいる。でも反対側には素晴らしいお客様がいて、付き合い続けたい、いい会社さんがあって、自分の役割があるわけじゃないですか。また崖があるわけですよ、ここで飛び降りるのまた、みたいな話で。そこで在ったのが、名前を出していいのか分からないんですけど、登山家の栗城君が亡くなられたんですよね。栗城君とはね、先ほど出てきたヤマトの会長もご紹介したぐらいの関係性で、ちょうどネパールで震災があった時に、栗城君から連絡があって、日本で一番早く震災の時に物流をね、回復させたヤマトさんのノウハウが欲しいって言われて、それで帰国するんで、ぜひ繋いでほしいって言ったから。ちょうど、あれですね、NHKのプロフェッショナル出た後だったんで、秘書室に電話して、すぐにあの週末帰ってくるって言うんで、月曜日の朝一でアポとって会長紹介した、まあそんな記憶があるんですよ。

[江良]
そうですか。

[新井]
その中で、その栗城君のまあ、祭壇のところで屈託のない笑顔で、もう見るわけじゃないですか。なんかね、新井さん、もうチャレンジしないんですか?僕はチャレンジしましたよ、って顔をするわけですよ。まぁ、やるかなぁ、そうだよなお前チャレンジしたんだもんなぁって思って。その時決めましたよね。もう俺は逃げないって。あの、やっぱりチャレンジし続けるし、別に鎌倉投信って上場したわけでもないから、何のお金も僕できてないし、一銭もないわけですよ。ずっと働いてる間、高給もらったことないし。だから外資のお金を全部注ぎ込んで、何にもない無一文の中で、何ができるんだろうかっていう風に考えて、あるお金は全部ね、あのIKEUCHI ORGANICの株買い取るので使おうと思ってたし、じゃあ本当にこれでやっていいのかっていうね。思いはその当時ありましたけど、50年、無一文でそのチャレンジできる社会を作るんだって、それは若い人たち、100年時代と言われている中で希望だろうから、それがやろうってやっぱり祭壇で思いましたよね。だから、やっぱりそういうきっかけっていうのはやっぱ大きかったですよね。だから、なんか全部そういうのが重なるタイミングっていうのがあって、だからこそなんかとんでもないというかね、本当に変わったものを作れるんじゃないかなと思うんですよね。

[江良]
いやー、ちょっともう、なんとなんと、コメントをしていいやら、本当に重なって何か導かれたかのように。

[新井]
そうなんですよね。そうそうそう本当なんですよ。

[江良]
栗城さんに、もしかしたら導かれたかのように、

[新井]
押してもらってね。で、まだね、ちょっと恥ずかしいんですけど、本当に早くお父さんとこ行って、ちょっとお墓参りさせてもらわないとな、っていう風に思ってて、北海道ですからね。だから本当に、それでまた北海道にいるっていうのは不思議なご縁だなと思いますね。

[江良]
じゃあそれでその立ち上げられたeumoなんですけど、多分eumoって何っていうのをまず最初に

[新井]
そうですよね、わかんないですもんね。

[江良]
どういう仕組みかとかですね、簡単にお願いしていいですか。

[新井]
ありがとうございます。eumoっていう社名がですね、eumoって書くんで、エウモとかよく読まれるんですけど、もともとこれの語源がユーダイモニアっていう言葉で、そもそもの言葉がギリシャ語から来てるんですけれども、最近よくウェルビーイングって言うじゃないですか。ウェルビーイングの一属性なんですよ。ウェルビーイングの属性の中に色々あるんですけれども、ユーダイモニアっていうのは、持続的幸福って言って、割と短期的な幸福であるヘドニアってあるんですけど、ご飯を食べたり、お酒飲んで「ああ幸せだ」って感じる、あの幸せがヘドニアなんですけど、その対極がユーダイモニアで、生き甲斐とか働き甲斐とかっていうものを感じた時に得られる幸せ。これを指すんですよね。で、それを手に入れられるような社会にしていきたい。そういうふうに思っていて、で、僕らは資本主義をどうアップデートするかって考えた時に、次の時代っていうのはやっぱり共感が大事だよねって。AIの時代になっても人間が必要とされる要素って共感。つまりAIが不得意なところだから、その共感っていうのを活かせるようなものにしていきたい。でそのためにも生きがいや働きがいっていうものを、感じられる社会にしていくんだと思って、そのユーダイモニアの最初のEUと真ん中のMOを取って。短くeumo。通貨単位にしたかったんで、ユーロに近いかなと思って作った造語です。

[江良]
耳ざわりもね、柔らかくて素敵ですもんね。

[新井]
ありがとうございます。そう言っていただいて。

[江良]
これはやっぱり通貨なんですか?

[新井]
はい、私どもが掲げたのは、やはり資本主義っていうものが限界に来てるっていう中で、じゃあ何を大切にしていくのかって言った時に、僕はお金よりも大切なもの、つまり人が幸せになっていくために必要な要素って、もう幸福学上もうすでに分かっていて、良好な人間関係なんですよ。要は人と人との繋がりの方が大事なんです。でも今のお金って、今の社会って、人よりもお金を信じるじゃないですか。

[江良]
そうですね。お金の背景にある人がね、分業で分業で分業だから、

[新井]
繋がらないですよね。だからその繋がりを作れるような、仕組みを作っていかなきゃいけない。取り戻していかなきゃいけないと思って。あの、だからこそ、その事業内容として、その社会を目指すために人作りをしなきゃいけないと思って、アカデミーをやり、そしてもう一つそのお金の概念を変えていくためのプラットフォームを作っていかなきゃいけないといって、その通貨的なものと、両輪で今やってるんですよ。

[江良]
なるほど。

[新井]
やはりその考え方とか価値観とか、あのまあ、こういった我々が掲げている共感資本社会ってどんな世界観なのかって伝える伝道師を作っていかなきゃいけないので。

[江良]
おっしゃる通りなんでしょうね。普通にね、あの普通の方に申し上げても、なかなかこうね、普段のね、わからない。そこに、ただ気づきだしてるとか、おかしいなとか、さっきここからおっしゃっていただいた、いろんな矛盾とか歪みたいなものを、みんな潜在的にはね、みんな持ち始めてる。ただ、今の新井さんのビジョンまでわからないから、それをやっぱりまず、素地を伝えていく人を育てていく。それがアカデミー。

[新井]
そうなんです。で、あの、そういう生き方をしてもらえるような人たちを作っていくことによって、自分たちが実現したい未来というのは見えてくると思ったんです。で、あの僕らが目指す社会像って、あの、僕いつも思うんですけど、みんなが作る社会の方が面白くないですかって。あの必ずこの共感資本社会ってどんな社会ですか?っていうことを聞かれるんです。アカデミー生にも。いやあの共感は大事だって。ですからその共感を大切にしていけるような社会づくりっていうのは、僕が決めることではないって。僕は受動的な社会。つまり誰かから与えられた資本主義じゃなくて、自分たちが作りたい社会をみんなが自分のコミュニティで作ってもらうっていう社会を作りたいんだって。それはそれぞれが考える価値基準での幸せっていうのは当然あるので、あと、その様々なコミュニティで大切なものを大切にしていただけるように、それぞれが能動的に社会を作っていく、その仕組みを提供したいんだ。そうすると大体の人ははあ?ってなるわけですよ。でも、本質的にはそうですよね、だってみんなが社会を作っているはずなのに、そうですね、やらされ感たっぷりなんですよ。資本主義ってね。

[江良]
人が決めた、お金のまあ奴隷みたいな感じとか、そうなそうなやっぱ結局自分たちでどう主体的にまあ、何をやっぱり幸せとか価値としてね、するか。ま、そこはやっぱりお金が一番だったね、まあ新井さんみたいなこととか、いろんなやっぱりこうねお金と幸せはイコールでは決してないから、何が価値で、そうするとじゃあ仲間と一緒にいることだとか。お金なくてもね、こういう生活だとか、

[新井]
そうですね物物交換でもいいですね。

[江良]
ただやっぱりその繋がりというか、何がこうね、じゃあ今日買った食べ物とか、エネルギーでも何でもいいわけですけども、まずどっから来て、でまぁ誰のどういう思いとか、背景をね、ストーリーを、それをまとめてこう、いただいたりとか、そこにまあ我々からも感謝をちゃんと伝える。ね、お互いの相互性みたいな。なんか多分そういったものが、まあ少なくともあった方が幸せに近い、っていうのはなんかそうイメージはできますよね。

[新井]
いやそうなんです。ですから、能動的に、自分自らが社会を作っていくっていう人たちを増やしていけば、全然違う景色が見えるんじゃないかなって。

[江良]
すごい、本当にあのみんなが、そういうね、本当に日本人はおまかせ、大好きですからね。

[新井]
だからこのままでは日本も終わってしまうし、本当に残したいものとか、本当に次の世代にバトンを渡したいものが残せなくなるっていう危機意識があるんですよ。これは先ほど言ったIKEUCHI ORGANICも一緒で、この美しい会社を残さずに、何を残すんだってやっぱ僕は思ってしまうんですね。

[江良]
なんか本当ね、資本の論理とかなんかね、そういう、最近はやっぱり海外の資本とかねいろんなことある中で、やっぱりね、自分たちが本当にいいっていうね、主体的に判断できる良さを守れる仕組みというか、そういうコミュニティ、仲間がやっぱり必要ですよね。

[新井]
そうなんです。ですからそのために、そういった行動を起こせる人たちを集めて、で、その人たちの中で流通するお金っていうのを定義し、で、その定義も自分が定義するんじゃなくて、いろんな人たちが自分たちの中での価値あるものを、お金として流通させることができる。この一つ一つのコミュニティごとのコインを作ることができるプラットフォームを提供しようということで、今全国各地に15くらいの種類のコミュニティコインができて流通しているような、そんな状況なんですよね。

[江良]
本当に、まぁプラットフォームで、そのコミュニティとその中で主体的にその価値がなんでどう交換していくかっていうことを、主体的にやりたい人たちがこのeumoっていうプラットフォームの仕組みを使って実際に、実際に運用できる。

[新井]
その通りです。

[江良]
なるほどそのための仕組みをご提供されている。

[新井]
そうです。

[江良]
あとはその仕組みを使ってやってみようって言ったり、それを地域で自主的に始められるような伝道師的な方々を育てている。

[新井]
その通りです。

[江良]
なるほど、よく理解できました。

[新井]
そう考えると、僕らは実は学生でも作れるようにと思っていて、あの実はこのeumoのコミュニティ通貨を一つ作るのに、お金一切とってないですよ。

[江良]
え?またまた、チャレンジングな。

[新井]
多くの、そういったサービスをされているところは、今の時代ね、スマホベースであるんですけど、僕らは入り口ではお金は取らないっていうことで、誰もがお金をデザインできる時代を作るっていうことを決めて、それが社会を変えていくための原動力じゃないですか。

[江良]
そうですね。

[新井]
で、お金が変われば社会は変わっていくっていうふうに思っているので、そういう意味で若い人たちが新しい社会を作りたい、新しいコミュニティを作りたいっていう中で、自分たちのコミュニティの中で大切にしたいものを大切にできるような、仕組み作りのお手伝いをしたいと思って、実は入り口を無料にしてやってるんですね。その代わりただ、大切なことは、社会や地域のためになるような、コインを作っていくことっていうのが条件で、入り口はフリーにしてますね。

[江良]
それはある程度こう、新井さんの方で、この方々のこういう思いだったら無料で使っていいよっていう

[新井]
一緒にやっていけるなっていうところを選ばせていただいて、そのコミュニティの活性化のために使ってもらって、僕らは金融的支援をするっていうような。

[江良]
なるほど、素敵ですね。あとあれですよね、新井さんニセコに移住されて、先ほど何やら面白いことが始まりそうなことを、ちょっとちらっとお伺いしたんで、ちょっとその話もお聞きしていいですか?

[新井]
まずこのeumoの通貨の仕組みっていうのは、ベースは僕は、皆さん聞かれたことがあるかもしれないんですけれども、贈与経済っていうものを作っていきたくて、結局自分たちの存在もお母さんがギフトしてくれたから存在してるんであって、お金の存在意義っていうのは僕は、ありがとうっていうものを表現するための一つの方法論だと思っていて、それが相手もそれを使うことができて、次のありがとうにつなげられるっていうことが意味があること。つまりお金っていうものの存在、これが意味のあるものになっていくために必要なことだと思っているんです。そのためには相手にありがとうって言って、渡せるようなお金をデザインしたかったので、基本的にはギフトするっていうことが前提になっているもので、今の資本主義って真逆で自分がどれだけメリットがあるかっていうもので、カードを使ったり、キャッシュレスを使ったりっていうことを、皆さんされてるんですけど、eumoの世界観っていうのは相手に貢献するっていうことでしかないので、相手に貢献するための仕組みっていうふうに理解していただけたら嬉しいかなと思います。これを世の中でよく、ギブアンドテイクとか言いますけれども、ギブアンドテイクっていう、本の中でも出てるんですが、いわゆるギフトをする人、ギバーと言われている人たちが、安心してギフトができる状態っていうのを、この仕組みの中では作り上げて、今ユーザーとしては6,000人を超えるユーザーの方々が今使っていただいてるわけです。そうすると、これ鎌倉投信の時と一緒なんですけど、応援をするっていう概念、つまり定価以上に払うっていうことをされるので、各加盟店さんで使う時に応援がたくさん集まる。そんな仕組みなんですよね。毎日商品の中でクラウドファンディングするよ、そんな感じなんです。その仕組みを北海道のニセコ町の中に入れていこうということでまさに動き始めて、実は昨年の11月に、ふるさと納税の返礼品として我々が提供しているeumoの一つのコミュニティ通貨、NISEKO eumoというのがあるんですけれども、NISEKO eumoが返礼品として渡されて、ニセコ町の加盟店で使えるっていうような仕組みを昨年の11月にローンチさせていただいたんです。ニセコの素敵なお店、僕らが紹介したいお店がたくさんあるので、そこに、あの、ふるさと納税していただいた返礼品で回っていただく。そういったコインを提供して、その名称がですね、ё旅納税、って言って、いい旅をしながら、納税をしながら、素敵な加盟店さんと出会って、素敵な関係性を作ってほしい。それで素敵だったらぜひ応援をしてね。チップを払っていただけたら嬉しいなっていうことでの、仕組みが提供されています。この仕組みのもう一つの特徴として、期限、腐るお金って言ってましたけど、3ヶ月で有効期限が切れるような形になってます。有効期限が切れたお金が共助のお財布に入って、それが何に使われるかっていうと、ニセコ町の子供たちのチャレンジに使われるっていう風になってます。これなんでそういう風になってるかっていうと、私が大好きなニセコ町の片山町長という方がいらっしゃって、町長とお話した時に、公共でできないことなんでしょうかって伺った時に、要は、健在化してこない貧困があると。ただ何かって言ったら、ニセコ町は5000人の街で、顔が見える関係性だと。どこの誰々ということは割とわかりやすいと。そうすると、困っていても逆に手が挙げにくい。役場に行ったらみんな知ってる人だと。

[江良]
なるほどねえ。伝わっちゃうし。

[新井]
広まっちゃうし。じゃあその時に潜在的に隠れている貧困っていうものにリーチできない、じゃあ代わりに僕らがやりましょう。公共では学費をサポートしたり、食費をサポートすることができる、僕らはその 経済的に難しい人たちの子供たち、ちょっとチャレンジするなんていうことは公共ではサポートできない。だから子供たちが何かチャレンジしたかったら、それに全部お金をつけると。僕らはある種、あの、そういった、支援という形じゃなくて、見える関係性の中で、そういったものをどんどんチャレンジさせていくことができれば、子どもたちの顔が変わっていくだろうと。それを生み続けようと思って、子どもたちのチャレンジに使うってやってます。今のNISEKO eumoのё旅納税のですね、ホームページ上に、チャレンジした記録がまだスタートしたばかりなので、一件のレポートしか出てないんですけど、レポートが出てるのでチャレンジレポートは、ぜひ読んでいただけると嬉しいかなと思ってますので、ご紹介いただけると嬉しいです。 ( ё旅納税 子どもたちのチャレンジレポート)


[江良]
もちろんです。

[江良]
あのね、昔からまあ、その、まあ、すごい村社会みたいなそういうこうね、濃いいことも含めて、あるかもしれないですけど、でも、まあ、ありますよね。だから、その中でこう、果たしてこう、使い方としてね、どういう形で機能するのか。なんかこういうところはもしかしたら機能しないかもしれないから、ここはでも、設計はお上手そうだから、こうしてこうしようとか、

[新井]
いやいや、試行錯誤ですよね。これからね。でもワクワクしてるんですよね。

[江良]
なんかあれですよね。こう本当に一番最初に、そのお金って何っていうところから始まって、そういった共同幻想でしかないと。特にその紙幣発行するようになってから。そこに対する違和感が出てきて、今だからもう、新井さんが新しい共同幻想、理想的な共同幻想、この幻想をみんなで持っていくと幸せだから、それをどうやってみんなで持てるのか、具体的な仕組み、ツールは何かっていうところを50歳過ぎられて、チャレンジして、それがこうまた形になっているというフェーズっていうことですよね。本当に。

[新井]
誰もやったことないことじゃないですか。もう不安もあるけどワクワクがもういっぱいですよ。だってみんな思ってるんですもん。あの草刈りだってくれる人たち、ありがとう言いたいんですよ。表現したいんですよ。でそれが持続可能になるようになっていきたいわけですよ。で、なんか申し訳ないなと思った時に、あの人にこう、今持っているコインを送ろうとか、こういうことをやってくれてありがとう、みたいなのを表現できる社会っていうものが、この北海道のニセコ町で実現できるように、僕らは活動していきますし、そんな素敵な街にできたら本当にいいなと思ってますんで。

[江良]
それって例えばなんですけど、ニセコって、僕東京ですけど、東京からも今年、ニセコアンヌプリに行きましたけども、そういう外からのビジターとかも、そういうNISEKO eumoとかに参加するような仕組みとかもあるんですか?

[新井]
それはあのちょうど先ほど言っていたですね、あのふるさと納税の方でご参加いただけるので、関係人口の人はふるさと納税、そして地域の方々、これからお渡しすることができるようになるだろうポイント、これを使っていただきながら、この仕組みを楽しんでいただけたら嬉しいかなと思ってるんですよね。

[江良]
なるほど。ニセコに旅行を考えていらっしゃる方はちょっとぜひですね、ё旅納税

[新井]
ё旅納税の仕組みをぜひ使っていただいて、今スキー場のリフト券もそれで買えますし

[江良]
あ、そうですか。

[新井]
あの泊まってもいただき、宿に泊まっていただくこともできるようになってますので、ぜひぜひウォッチしていただけたら嬉しいなと思ってます。

[江良]
はい。いや、じゃあ、このポッドキャスト最後に、あの今これ聞いてるリスナー、どちらかというと都市部の方をイメージしてるっていうのはあるんですけども、何かこう、いま新井さんのお話を伺って、こういろいろ気づきとか学びがあった方々に、何かこう今日から、明日から、こういったことをしていくと、何かシフトがしていけるんじゃないかと、何かアドバイスがありましたら、ちょっとぜひお伺いさせていただければと思います。

[新井]
ありがとうございます。本当に先ほど申し上げていたようにですね、ぜひニセコにいらしていただきたいんですよね。で、新しい社会像っていうものを生もうとしている町が、どういう活動をしようとし始めてるのかも知ってほしいし、ニセコに限らず今、15近い地域やコミュニティの中で、eumoは活動していますので、そういう意味で、これちょっと興味あるなとか、ちょうど行く機会があるな、みたいな形で使っていただけると、すごい僕らの世界観を感じていただけるんじゃないかな。そのためにもまずは、eumoというアプリを、ダウンロードしていただく必要があるので、ぜひダウンロードして、使ってみていただけたら、嬉しいかなというふうに思うんです。僕らの世界観っていうのは、本当に皆さんがお金の奴隷にならないような形で、お金っていうものを見直していただく機会ですし、使えば使うほど豊かな気持ちになってくれて、いろんな人とつながれるようなツールになってます。なかなか動けない人も通販とかで、つながっていただくことができる部分もありますので、様々な形でつながっていただきたいので、eumoのアプリをダウンロードしてまずは試しに使ってみていただきたいのと、あともう一つは我々毎月ですね、座談会というのをやっていて、これは無料なんですけれども、オンラインでですねeumoの考え方、価値観に触れていただいて、それでeumoのコミュニティに入っていただく機会、これはアカデミーもそうなんですけれども、けれども様々な人との対話ということを実は毎月やってます。ですので、ぜひ毎月やっている座談会にですね、参加していただけると嬉しいなと思っておりますので、そこはざっくばらんに話せる場でもありますので、ぜひぜひ、ご参加してeumoの世界観を感じていただけたら嬉しいかな、そういうふうに思ってます。

[江良]
ありがとうございます。じゃあ皆さん、じゃあeumoのアプリをダウンロードすると、そのコミュニティの

[新井]
そうですね

[江良]
座談会とかの情報とかも出てくるんですか?

[新井]
座談会の情報はすいません、ホームページの方に、webサイトの方に出てますので、またそちらご案内させていただいて、あとeumoのアプリの方は、ぜひ加盟店のほうで使っていただけたら嬉しいかなというふうに思ってます。

[江良]
わかりました。じゃあ新井さん、今日は本当に長い時間に、お忙しいところ、

[新井]
とんでもないですこちらこそ、長々話してあれでしたから、大変楽しかったです。

[江良]
非常に勉強になりました。またいろいろ、でも聞いていただいてる方も、やっぱりどういう形でね、自分たちの生活をより良くしていけるか、ということを考えてる方々が多いと思いますので、ぜひこのeumoとかを参考にしたり、実際取り入れてね、主体的にみんなでコミュニティをいい方向に作っていけるように、いろいろこれからも、教えていただければと思います。

[新井]
こちらこそよろしくお願いします。

[江良]
今日は、非営利株式会社eumoの新井 和宏さんにお話を伺いました。どうもありがとうございました。

[新井]
どうもありがとうございました。